アニメーションとしては、親父vs長田一行のアクションが一番印象的でしたね。あのシーン、急に雰囲気が変わりましたよね。劇画調ともちょっと違う、いわゆるアニメの表現とは一旦切り離して作られてるような。分野に疎いので「動きがすごかった」とかいうアホみたいな感想にしかならないんですけど。
あと、沙代さんの髪がキレイ。ああいうピアノ線みたいに光が反射する表現、「けいおん!」あたりからよく見るようになって、どんどん磨きがかかってますね。新海誠もやってるし。やっぱものづくりってのは全員で一歩ずつ進む研究職なんすよね(?)。
観に行ったあと旦那にあらすじを聞かれて気付いたのは、このアニメはストーリーを説明するのがめちゃくちゃ難しいということですね。人が殺されるけど推理モノではないし。バトルものの側面もある。ゲゲゲの鬼太郎誕生の秘密という触れ込みではあるが、言うほど鬼太郎の生まれに食い込んだ話ではない。
この話の良さってたぶん1930年当時において保守的な龍賀一族と、“現代的”な水木の対立、内ゲバ、及びその両者どちらでもない幽霊族(鬼太郎の親父)がそれぞれの信念に基づいて行動するのを、2023年に生きる我々が観測するという構図にあると思いました。
昔の……つってもせいぜい100年ぐらい前の人間が、同情の余地はあるにせよ全員狂ってて、被害者に見える人間もまた例外ではなく、比較すると幽霊族がかなりマトモに見えるものの、自分の命にほとんど執着しなかったり、あまりにも浮世離れしていたり別方向に狂ってるとも言える……のがキモで、やっぱどうしたって人は狂っていて、金や地位に執着するのも狂気だけど、愛とか心とかもまた狂気のひとつで、でも肯定されるべきはいつの時代もそういうもの(愛とか心とか)だよね、というメッセージを感じる。それを、戦争帰りである水木先生が持っていたであろう視界と、日本社会が今も背負い続ける病理に絡めて丁寧に描いた……という話のような気がします。あと、“子は宝”ね。
抽象的ですみません。でもほんとにストーリーが難しくて。はい。
あとはけっこう政治批判の向きが強いですね。この一連の事件に関わった人みんな社会に蔓延る『お国のため』的思想の被害者なんじゃないか、っていう。さらっと描いてるけど重要だし、それが逆にすごい。
旦那には結局うまく内容を説明できず「???」という反応をされてしまいました、面白いのに。くやしい。
そういえばパンフ欲しかったのに売り切れてました。人気の証拠ね。
気になっている方は迷わず劇場に足を運ぶと良いと思います。損はしないです。はい。